読書感想『ニックス』 ネイサン ヒル著

ニックス

  • ネイサン ヒル
  • f:id:showpon21:20201211233350p:plain

    40年程の歳月を隔てた時代に登場する人物達は緻密な手の込んだ関係性で描かれる。ある日突然、母フェイから見限られた主人公の教師サミュエルによる母を探求するプロセスは、この物語の母体となる彼女の謎に満ちた過去そのものでもある。魅力有る謎に満ちた世捨て人の様なフェイが辿る孤高の生き様は、凛として時には毅然として痛々しくもあり悲しくもある。大掛かりな物語に圧縮される登場人物達は、時代の奔流の中に身を委ねながら苦悶する。散在する込み入ったプロットを丹念に積み上げて、最後に一つに纏め上げていく作者の手腕に拍手喝采