読書感想『カーペンターズ・ゴシック 』ウィリアム・ギャディス著

カーペンターズ・ゴシック

  • ウィリアム・ギャディス
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  • 読み終えた後は、頭の中を掻き回わされる様な眩惑感に苛なまれる。怒濤の様な氾濫する言葉を解読すると遺産の争奪、死亡事故、政治的陰謀と政府機関の暗躍の数々であるらしい。只でさ掴みにくいプロットは、登場する人物や電話での発話はカギ括弧で括られる事が無く、会話に挟まった語り部も固有名詞を指し示すのに男、女という人称表現に徹している為、迷宮の泥沼に引きずり込まれる。そして次第に混迷から脳裏がギリギリと研ぎ澄まされる様な魔術的なテキストの悦楽が襲う。ギャディスには前作の長大な『JR』の未読が残るが、さて、気が重い。